
VTuberは2016年の登場以降、動画中心の時代から生配信の定着、海外展開、そして企業による事業化へと段階的にスケールしてきました。市場の語り方も、再生数や話題性だけでなく、グッズ、イベント、BtoBなど複数の収益軸をどう積み上げるかへ比重が移っています。
こうした動きを踏まえると、VTuberはネット文化の一部にとどまらず、日本発のエンタメ産業の一領域として扱われる場面が増えていると言えます。
本記事では、2016年の黎明期から2025年の構造変化、そして近年目立ってきたAI活用の流れまでを、主要な出来事と背景の変化で追い直します。まずは年表で全体像を押さえ、次に各年の転換点を読み解いていきます。
- 【年表】VTuber業界10年の歩み(2016〜2025)
- 【2016年〜2017年】黎明期の空気:3Dの動画文化と、四天王ブームの入口
- 【2018年〜2019年】配信スタイルが決まった時期:Live2Dと事務所の台頭
- 【2020年〜2023年】拡大期:追い風と、事業としての輪郭が固まった4年
- 【2024年~2025年】転換期:海外拠点の整備と、運営課題の可視化
- 【結論】VTuberの10年で起きたこと、これから見るべきこと
【年表】VTuber業界10年の歩み(2016〜2025)
VTuberの10年を、動きの質が変わった4つのフェーズに分けて整理します。細かな出来事は補足しつつ、ここでは転換点がどこにあったかを優先して押さえます。
第1期:黎明期(2016〜2017)
- 2016年末〜2017年:キズナアイを代表例に、VTuberという呼び名と表現フォーマットが広がる
- 2017年後半:いわゆるVTuber四天王と呼ばれる人気勢が注目を集め、最初のブームが形になる
第2期:配信スタイルの定着(2018〜2019)
- 2018年2月:にじさんじの1期生がデビュー。Live2Dを活用した長時間の生配信が広がる
- 2018年〜2019年:事務所型の運営が増え、タレントマネジメントや制作体制が競争力になる
- 2019年前後:広告中心から、メンバーシップ、スーパーチャットなどファン課金の比重が高まる
第3期:グローバル化と企業化(2020〜2023)
- 2020年:視聴環境の変化も追い風となり、海外を含む視聴者が増加。英語圏向け展開が目立つ
- 2022年~2023年:にじさんじを運営するANYCOLOR、ホロライブを運営するカバーが東証グロースに上場
第4期:構造転換とAI活用の加速(2024〜2025)
- 2024年~:海外拠点の整備や大型コラボが進む一方、卒業や運営課題も可視化される
- 2025年2月:Brave groupがNeo-Porteと経営統合し、業界再編の動きが目立つ
- 2025年:生成AIの進化により、キャラクター体験と会話AIの距離が縮まり、AI活用が語られる場面が増える
【2016年〜2017年】黎明期の空気:3Dの動画文化と、四天王ブームの入口
キズナアイの登場と、VTuberという呼び名のスタート
VTuberの歴史をたどるなら、入口はキズナアイです。2016年末にかけて動画が動き出し、自分でバーチャルYouTuberと名乗ったことで、この呼び名が一気に広まりました。
当時は、3Dモデル制作や収録環境にお金と手間がかかりやすく、短めの編集動画が中心になりがちでした。いまの生配信文化とは違って、企画と編集で見せる動画型エンタメとして立ち上がったのが、この時代の持ち味です。
2017年:四天王ブームで、VTuberがネットの主役に近づく
2017年の後半から年末にかけて、VTuberは一段ギアが上がります。ミライアカリ、電脳少女シロ、輝夜月といった人気勢が次々に話題になり、いつの間にかVTuberという形式そのものが通じる空気ができていきました。ミライアカリは2017年10月27日から活動開始しています。
さらに、バーチャルのじゃロリ狐娘Youtuberおじさんのような個人勢も注目を集め、個人でも勝負できるという感覚が広がります。2017年の終わりには、VTuberがネットカルチャーの中心へ寄っていく流れがはっきり見えてきました。
この時期のキーポイントは、登録者数の増え方よりも、VTuberという型が一気に定着したこと。その土台があったからこそ、次の2018年以降に生配信スタイルが広がっていきます。
【2018年〜2019年】配信スタイルが決まった時期:Live2Dと事務所の台頭
にじさんじが持ち込んだ、生配信中心という当たり前
2018年2月、にじさんじの1期生がデビューし、月ノ美兎も同時期に活動を始めました。
ここで空気が変わったのは、完成品の動画を見せるよりも、その場の会話と反応で時間を積み上げるやり方が前に出たことです。Live2Dと独自アプリを使い、生放送を中心に展開していく方針は、当時の運営発表にもはっきり出ています。
視聴者側の楽しみ方も変わりました。編集で整った面白さより、コメントに返ってくる一言や、雑談の転がり方を追う体験が、VTuberらしさとして定着していきます。
ホロライブが伸ばした、音楽とライブの軸
同じ頃、ホロライブも規模を広げていきます。中心にいたときのそらはバーチャルアイドルとして活動し、音楽やステージに寄せた展開がホロライブの色になっていきました。
生配信で関係性を濃くしつつ、音楽やイベントで熱量を一段上げる。事務所型の強みが、ここから分かりやすく見えるようになります。
2018年末の追い風で、参入が一気に増える
2018年末には、ガジェット通信のネット流行語大賞2018でバーチャルYouTuber/VTuberが1位を獲得しました。
この頃から、個人だけでなく企業もVTuberを前提に動き始めます。新規の参入、事務所の立ち上げ、番組やコラボの企画が増え、VTuber戦国時代という言い方が出てくるのも、この流れの延長線上です。
加えて、YouTubeの投げ銭機能であるスーパーチャットは2017年に提供が広がり、ライブ配信の収益化を後押ししました。
結果として2018〜2019年は、配信とファン課金の組み合わせが現実的なビジネスとして見え始めた時期でもあります。
【2020年〜2023年】拡大期:追い風と、事業としての輪郭が固まった4年
コロナ禍で広がった視聴と、英語圏への入り口
2020年は、家で過ごす時間が増えたことで動画視聴が伸び、VTuberを初めて見る人も増えました。YouTube全体でも、2020年3月の各地の行動制限を境に視聴が増えたことが分かっています。
この流れの中で、hololive Englishは2020年9月に活動を開始し、英語圏に向けた展開を本格的にスタートさせました。デビュー直後から話題の中心にいたのが「がうる・ぐら」で、海外の視聴者が一気に増えた象徴として語られます。
スーパーチャットが示した熱量の可視化
この時期は、ライブ配信でのファン課金が目に見える形で伸びました。データサイトの集計では、スーパーチャットの上位にVTuberが多く並ぶ傾向が続いています。
ここで大事なのは、投げ銭が唯一の収益源になったという話ではなく、配信という体験が、応援の行動を生みやすい形で定着したことです。
二大運営の上場で、業界が投資家の視界に入る
事業面の節目になったのが上場です。ANYCOLORは2022年6月8日に東京証券取引所グロース市場へ上場し、カバーも2023年3月27日に同市場へ上場しました。これ以降、VTuberは熱量のあるカルチャーであると同時に、継続的に運営されるビジネスとしても語られるようになっていきます。
【2024年~2025年】転換期:海外拠点の整備と、運営課題の可視化
海外に向けた体制づくりが一段進む一方で、卒業や運営判断をめぐる話題も増え、グローバル展開の難しさが表に出てきます。ここから先は、面白さだけでなく運営の設計が成果を左右するフェーズに入っていきます。
COVER USAの設立で、北米展開が次の段階へ
カバーは北米拠点として「COVER USA」を設立し、現地でのイベントやマーチャンダイジングを強化する方針を示しました。4月に設立し7月に営業開始しました。
日本からの発信だけでは届きにくいところを、現地の人材と仕組みで埋めていく。海外向けの動きが、戦略として読み取れる形になった出来事です。
卒業と契約解除が示した、運営の難しさ
同じ年、卒業や契約解除といったニュースが続き、タレントと運営の関係性が注目される場面も増えました。ホロライブでは湊あくあが2024年8月で卒業し、大きな話題を生みました。にじさんじENではSelen Tatsukiの契約解除が公式に発表されました。
企業コラボとメディア展開で、活動領域が広がる
一方で、外部コラボも拡大しています。たとえばhololive productionはロサンゼルス・ドジャースと2024・2025年に「hololive night」を実施し、ここでしか見られないコラボレーション企画を実現しました。こうした動きは、VTuberがアニメやゲームの文脈だけで語られなくなってきたことを示します。
【結論】VTuberの10年で起きたこと、これから見るべきこと
2016年から2025年までの約10年で、VTuberはネットの話題から始まり、配信文化の定番になり、企業が継続的に運営する事業へと形を変えてきました。
熱量のあるファンコミュニティ、グッズやイベントを含む収益の広がり、海外展開の強化。ここまでの流れを見ると、VTuberは一過性のブームというより、長く続くコンテンツの枠組みとして定着しつつあります。
近年では卒業や運営判断をめぐるニュースが続き、タレントと運営の関係性、説明の仕方、グローバル展開の難しさが目に見える形になりました。
一方で同じ時期に、海外拠点の整備や大型コラボも進み、成長のしかたが次の段階に入ったことも確かです。
そして生成AIの進化がキャラクター体験に入り込み、VTuber的な見え方を持つAIコンパニオンが一般向けにも届くようになりました。人が演じる価値と、技術で補える部分。その境界が、より具体的な設計の問題として語られ始めています。
これからVTuberを追うときは、人気の大小だけでなく、どんな運営体制で継続しているか、収益が厚いのはどこなのか、海外向けの設計がどう変わるか…を見ると、とても面白いです。
次の数年は、配信の面白さに加えて、IPとしてどう積み上げるかがより重要になっていきそうです。
viviON SQUARE編集部
viviON SQUARE編集部がお届けしています。
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